本当の愛を知るまでは
「わあ、素敵なところ! 緑がいっぱいで、建物もオシャレで」
「ああ。有名な建築家がデザインしたらしい。外国の小さな街みたいだな」
「本当に。お部屋も楽しみね」

2時間ほど走って着いたホテルは、空気の新鮮な高原の中にあった。
花純はわくわくしながら光星の手を引いて、ロビーに向かう。

「光星さん、早く!」
「ははっ! 花純、子どもみたいだな」

吹き抜けのロビーは自然光が降り注ぎ、明るく広々としている。

「森川様、いらっしゃいませ。本日はメゾネットスイートのお部屋を2名様ご一泊でご用意しております。チェックインの手続きをいたしますが入室は15時からですので、よろしければお先にプールやショッピングなどをお楽しみください」

フロントでカードキーを受け取り、荷物を預けた。

「花純、先にプールに行かないか? プールサイドにカフェもあるから、ランチもそこでどう?」
「プールにカフェがあるの? すごい!」
「じゃあ、決まりだ」
「うん! あ、でも……」

急に声のトーンを下げた花純に、光星は「どうした?」と顔を覗き込む。

「水着がね、あんまり可愛くないの」

あの日は滝沢の告白で気もそぞろになり、気に入った水着が見つけられず、結局3年前のものを仕方なく持って来ていた。

「なんだ、そんなこと。花純は何着ても可愛いよ」
「でも3年前のだから、デザインも古いし……」
「じゃあ新しくショップで買おう。ほら、行くよ」

今度は光星が花純の手を引いてプールに向かった。
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