本当の愛を知るまでは
午後になると、銀行や郵便局の用事で外出することになっていた。
「花純、私も行く」
「えっ? 千鶴ちゃん、やること多いんじゃないの?」
「大丈夫。行こ」
二人並んでオフィスを出た。
互いに何かを言おうとタイミングを計っているような、妙な雰囲気になる。
だが、1階に下りてロビーの窓から外を見ると、二人同時に驚いた。
「すごい風」
「うん、台風来てるもんね。ちょうど今ピークかも?」
木々が大きくしなり、風も不気味に唸っている。
「どうする? 時間ずらして行く?」
花純がそう言うと、千鶴は、うーん、と考え込む。
「でも銀行閉まっちゃうし、今なら雨も降ってないから、行っちゃわない?」
「そうだね」
そう言って自動ドアから一歩踏み出した途端、二人は吹きつける強風に動けなくなった。
「ちょっ、すごすぎるよ」
「ほんと。目も開けられないね」
「やっぱり無理かも? とにかく一旦戻ろうか」
「うん」
花純が頷いた時、千鶴が持っていた書類ケースが風で飛ばされた。
「あっ、大変!」
「私、取ってくる。千鶴ちゃんは中にいて」
そう言って花純は駆け出した。
向かい風でなかなか前に進めず、その間も書類ケースはズルズルと地面を滑っていく。
(大切な書類なのに。失くしたら大変!)
必死で追いかけていると、ようやくビルの外壁に当たって止まった。
ちょうど外壁補修工事の期間で、鉄パイプで足場が組まれている場所だった。
(良かった、あそこで止まって)
花純は懸命に手を伸ばし、書類ケースを掴む。
ふう、と胸をなで下ろした時、ゴーッとひときわ強い風が吹き付けてきた。
花純はその場にしゃがみ込み、目を閉じて耐える。
その時だった。
「花純、私も行く」
「えっ? 千鶴ちゃん、やること多いんじゃないの?」
「大丈夫。行こ」
二人並んでオフィスを出た。
互いに何かを言おうとタイミングを計っているような、妙な雰囲気になる。
だが、1階に下りてロビーの窓から外を見ると、二人同時に驚いた。
「すごい風」
「うん、台風来てるもんね。ちょうど今ピークかも?」
木々が大きくしなり、風も不気味に唸っている。
「どうする? 時間ずらして行く?」
花純がそう言うと、千鶴は、うーん、と考え込む。
「でも銀行閉まっちゃうし、今なら雨も降ってないから、行っちゃわない?」
「そうだね」
そう言って自動ドアから一歩踏み出した途端、二人は吹きつける強風に動けなくなった。
「ちょっ、すごすぎるよ」
「ほんと。目も開けられないね」
「やっぱり無理かも? とにかく一旦戻ろうか」
「うん」
花純が頷いた時、千鶴が持っていた書類ケースが風で飛ばされた。
「あっ、大変!」
「私、取ってくる。千鶴ちゃんは中にいて」
そう言って花純は駆け出した。
向かい風でなかなか前に進めず、その間も書類ケースはズルズルと地面を滑っていく。
(大切な書類なのに。失くしたら大変!)
必死で追いかけていると、ようやくビルの外壁に当たって止まった。
ちょうど外壁補修工事の期間で、鉄パイプで足場が組まれている場所だった。
(良かった、あそこで止まって)
花純は懸命に手を伸ばし、書類ケースを掴む。
ふう、と胸をなで下ろした時、ゴーッとひときわ強い風が吹き付けてきた。
花純はその場にしゃがみ込み、目を閉じて耐える。
その時だった。