本当の愛を知るまでは
「……花純?」
「光星さん!」

ぼんやりと目を開けた光星の顔を、花純はすぐさま覗き込む。

「光星さん、気分は? どこか痛む?」
「いや、大丈夫だ。花純は? ケガしてないか?」
「大丈夫。私はどこも……。光星さんが、守ってくれたから」

ポロポロと涙を溢れさせる花純に、光星は優しく笑って手を伸ばす。
そっと花純の頬に触れると、嬉しそうに目を細めた。

「やっと会えた。ずっと会いたかった」
「ごめんなさい。私、光星さんを避けてて……」
「ああ、気になってた。花純は何かに悩んでるのに、俺は何もしてやれないって歯がゆかった。だけど今日は、ちゃんと花純を守れて良かった」

光星さん、と花純は言葉に詰まる。

「私、あなたに酷いことを……。なのに、光星さんは私を……」
「花純」

声を震わせる花純の涙を、光星はそっと指で拭った。

「どんな花純でも大丈夫だよ。俺は花純のことが心から愛おしい。あの時、花純が危険だと分かった途端、考えるより先に身体が動いた。花純の為ならこの身がどうなっても構わない。俺にとって花純の存在はそんなにも大きいんだって、改めて気づいた」
「光星さん」

花純は頬に添えられた光星の手を両手で握りしめる。

「私も、あなたのことが心から大切です。ようやく気づいたの、こんなにも私を想って守ってくれる光星さんの存在の大きさに。ごめんなさい。恋愛しなければ良かったなんて、酷いことを考えてしまって……」

光星は少し眉根を寄せた。

「花純、どうしてそんなことを? 何があった?」

その時、ドクターが病室に入って来た。

「上条さん、気がつきましたか? ちょっと診察させてもらいますね」
「あ、はい」

花純は椅子から立ち上がり、その場を譲る。

「うん、大丈夫そうですね。痛み止めが切れたら傷が痛むかもしれません。遠慮なくナースコールを押してください。それからしばらくは起き上がらず、安静にしていてください」
「分かりました。ありがとうございます」
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