本当の愛を知るまでは
ドクターが部屋を出て行くと、光星が花純に話しかけた。

「花純、仕事は?」
「あ、えっと。千鶴ちゃんが部長に話をしてくれてると思う。光星さんの仕事は、臼井さんが調整してくれるって」
「そう。花純はもう戻りな」
「でも……」
「俺のことはいいから、とにかく一旦戻った方がいい。夜遅くなったら心配だ。それから花純、落ち着いたらゆっくり話をしよう。花純の気持ちを、俺は全部受け止めるから」
「光星さん……」

花純の目からまた新たな涙が溢れ出す。
光星は困ったように苦笑いした。

「こんなに泣いてる可愛い花純を一人で行かせるのは心配だな。花純、タクシーで帰るんだぞ?」
「うん、でも……」
「でも、なに?」
「……まだそばにいたい」

すると光星は今度こそ困り果てて眉根を下げる。

「花純、可愛すぎて俺も帰せなくなる。じゃあ、今はこれで我慢な」

そう言うと花純の頭を抱き寄せて、優しくキスをした。
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