だから、あたしは
4 最初のトラブル
それは、新学期が始まった数日後。騎士と仲直りするきっかけとなった事件が起こった。体育教師の前田敦也は固太り体型の暑苦しい顔のオタク野郎なんでけど、いちいち、うざい。体育の授業で難癖をつけられてしまっていたのだ。

「山田ーーーーー。貴様、恥を知れ! 昨日、切って来いと言ったのを忘れたのか!」

 そういうの、ブラック校則だわ。いや、違う。校則では髪型の規定はない。

『清潔な髪型にするべし』

 校則ではそうなっているの。やーね。これって、どうとでも解釈できるのよ、

 確かに、前田は、昨日、あたしに言ったわよ。その髪を何とかしろって。

「ちゃんと綺麗に洗ってます。清潔です」
 
「うるさい。そんな長い髪でうろうろするな。他の生徒のように男らしい髪にしろ」 

「そんなの嫌です! 校則に違反していませんよ! 不満があるなら理事長に言ってください!」

「体育の授業に差し支えるから自主的に切れと言っているんだよ! 貴様、なぜ、そんなに長い髪なんだ」

「個人の趣味です」

「何だと! さっさと切ってしまえ! 早く男らしい髪にしろ!」

「男らしいって何ですか? その定義は一体、何ですか?」

「質実剛健、文武両道の男らしい奴のことだ!」

「先生こそダサい幼女のアニメのキャラクターのシャツを着ているじゃないですか。それ、男らしいんですかぁ?」

 ガッツリと嫌粉な顔で毒を吐いてやったところ、前田が激怒してしまい、面倒なことになった。

「き、貴様ぁーーーーっ! 山田! おまえみたいなジャニーズ顔の奴は何でも自分の思い通りになると思っているんだろう! おまえの根性を叩き直してやる」

 ポニーテールを引っ張られたかと思うと前田によって顔を平手打ちされていた。キャー、暴力反対よ! もう、何なのよ。しかし、前田は顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている。

「教師に対して無礼な真似をした事を心から詫びろ!」

 ヌスリ。あたしの鼻から生暖かい血を流れている。ああ、やだ。理不尽な暴力に対して悔しくなってきたわ。

 今、令和だよ。こんな暴力が許される訳がないでしょう。

 口惜しくて、しょっぱい涙が溢れてきた。すると、ランニングしていた騎士が急にうずくま。そうやって前田の動揺を誘ったのである。

「騎士、どうした!」

 その問いに騎士が苦しげに告げている。

「す、すみません。前田先生……。貧血だと思います。山田と一緒に保健室に行きます。山田も治療しないとヤバイと思います。あいつも鼻血が出てます。山田、うちで預かっている子なんです」

「うっ、そ、そうか……」

 前田は権威に弱い。だから、こうやって理事長の孫には媚びへつらっている。この御時勢、さすがに暴力はマズイと悟ったらしい。という事であたしと騎士は保健室に向かった。

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