だから、あたしは
8 大河内の予言
「鈴木先輩。お話があります!」

 二年C組。お昼休み。廊下を歩こうとしていた鈴木を呼び止めたところ不機嫌そうに振り向いた。

「なんだ。早く言え!」

「騎士を野球の練習に参加させてあげてください! あなたが騎士の実力を恐れていることは知っています。しかし、真の成長は競争から生まれます。あなたも同じポジションに騎士がいることによって向上するチャンスです!」

「ふざけるな! 騎士がそう言ったのか!」

「違います。みんな知っています。あなたはライバルを恐れているのです。雑用なら、僕がすべて引き受けるので騎士に野球をさせてあげて下さい」

「おまえは俺のことを馬鹿にしてんのかーーーーーーーー!。生意気なことを言ってんじゃねぇぞ!」 

 鈴木がクラスメイトの加藤に向けて言う。

「おい、加藤! 騎士に言っとけ。山田入部の洗礼としてあれを使うぞ。例の場所に例の道具を持ってこさせろ!」
    
 きゃーーー。洗礼って何なのよ。痛いじゃないの。鈴木に首根っこを掴まれて北校舎の三階のトイレに押し込まれてしまったわ。悔しいよ。パワハラ全開だよね。

「山田、そこに座れ。正座しろ!」

 無理やり正座させられてしまった。床がヒャッと冷たい。しかも、換気が悪くて臭いのだ。

「恒例の儀式をしてもらうぞ。俺の小便を浴びろ。それが嫌なら丸坊主になれ。おまえに選ばせてやる」

 どっちもノーと言いたいわ。やだわ。鈴木の頭部は青光りしている。この学校で坊主頭なんてこいつだけだよ。みんな、お洒落な髪型だよ。あっ、違う。菊太郎は坊主頭が伸びたようなダサい髪型だな。何にせよ、あたしは断固反対だ。

「いいえ。無理です。剃りたくありません」

「いいか。部の伝統なんだ。みんな、やっている! 儀式の前に泣いて詫びろ! 頭をこすり付けて謝れ!」

「そんな横暴が通用すると思っているんですか? 先輩のこと、パワハラで訴えますよ」

「俺達は必死になって野球をやってんだよ! 本気で俺達の世界に足を踏み入れる覚悟があるのか! 屈辱に耐えるのが男の証だ!」

「そ、それなら、ファスナー、下ろしてください」

 クソッー。おまえのションベンとやらを浴びてやるよ。いいぜ。どんと来いよ。今のあたしは男だ!

 キッと睨みあげると、奴は粗末なチンコを付き出した。見てなさいよ。スマホで撮影してみんなに見せてやると企んでいたのだが。

「鈴木先輩……。ちっさい」

 それ、世間の平均よりも小さいですと、言いかけて自重する。

 あらら、お気の毒。いきなり、男子になったあたしのイチモツよりも小さいわ。

 どぶろっくのネタのユーチューブみたいに、『大きなイチモツを下さい』って、願うレベルの小ささよ。あたしの目に道場の気持ちが滲んでいたのね、

「うるさい! 黙れ! おまえ、生意気だぞ!」

< 24 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop