だから、あたしは
19 特別な朝
「おはよう……」

 翌朝。

 あたしが台所に入ると色鮮やかな朝食が出来上がっていた。トースト、目玉焼き、マカロニサラダ。デザートには新鮮なオレンジが添えられている。丁寧に焙煎したコーーヒーの良い香りが漂っている。

 明日は祭日。まだ学校に行かなくていい

「退屈しちゃったな。そろそろ学校に行きたいな」

 そんな事を呟いたのだが返事はない。あらら。なぜ、そんな顔をしているの? 変だよ。リビングで新聞を読んでいるフリをしながらも、その心は遠くに漂ってしまっている。

「どうしたの?」

 騎士は、決心したようにポケットに入れていたものをこちらに見せたのだ。

「これはどういうことだよ? おまえは何者なんだ?」

 あたしのパスポートだった。どうして騎士が持っているのよ。もしかして!

「ひどい! 勝手に荷物を探ったのね! 返してよ!」

「その前に答えろよ! 山田いずみ、おまえは何者なんだ!」

 なぜ、そんな怖い顔をしているのかな。鬼気迫る空気に気圧されてしまう。いきなり、強い力で身体をドサッと革張りの長椅子へと押し倒してきたのだ。

 やだ。どうして。何なの。抵抗できないようにあたしの肩を押さえている。

「教えてくれ。男装の女の子なのか! それとも、まえは女の子になりたくて必死に治療している男の子なのか、どっちなんだよ!」

 騎士は、あたしの正確な性別を確かめるつもりでいるらしい。あの、そういうのは困るのよ。

「やだ、やめて……。お願い、乱暴なことはしないでよーーー」

「乱暴なことはしない……。頼むから、おまえの秘密を教えてくれよ!」
 
 鬼気迫る顔にドキッとなった。

 なんで、そんなに必死なの。彼は、あたしのパジャマの裾から手を差し込んでいる。繊細な手つきで乳房を触られた瞬間、背中をのけぞらせていく。

 あたしが抗おうとして両足をバタつかせても無視している。

「騎士! やめてよ!」

 衣服が前開きになり隠されていたあたしの痩せた胸が晒されていた。その瞬間、騎士はハッとしたようにうなだれたのだ。

「違うのか……。いずみが女なら良かったのに」

 騎士は悔しげに顔を両手で覆って呻いている。女の子なら良かったのにという声が哀しげに震えていた。

 あたしも上半身を確認してみる。あらら、なぜか胸の膨らみが消失しているじゃないの。男の子の身体に戻っている。なぜなのよ! ええーーーーー。

 どういうこと?

 彼は、風呂場で。あたしのシルエットを見たのかな、あの時のあたしは女の子に近かった。

 だからこそ、こうして実力行使をして確認したのに、生憎、そこに女の子の胸は無かったのだ。

「ごめん。悪かった……。乱暴な真似をしてごめん。俺は、どうかしているんだ。マジで、ごめん」

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