だから、あたしは
いっけなーい。つい、あたしと言ってしまった。油断大敵だわ。うっかりしていると言葉遣いが女の子になるわ。
「いずみってお姉さんにソックリだな。おまえってさ、黙ってると女みたいに見えるぞ」
こいつは、インスタの女子と目の前にいるあたしが同一人物だとは考えもしないのね。単純馬鹿そのものだわ。
だが、みんながみんな菊太郎のように鈍い訳ではないようである。
それは、転校初日の放課後の事だった。桃園という生徒が嫌味ったらしい声で話しかけてきたのだ。あたしがトイレから出てくると鬼のように形相でカツカツと詰め寄ってきたのである。
「おい、山田いずみ! あんた、みんなに嘘をついているだろう? あんたは女だよな」
ビクッ。動揺してしまうが決して悟られてはいけない。
桃園は背が低くて、なかなかの美少年だわ。クルンとした茶色の天然パーマは欧州の男の子みたいにお洒落。
見た目はラブリーなのに少し癇癪持ちのようである。
「僕には分かるんだぞ! 男のフリしようとしても僕の目は誤魔化せないぞ」
「そうかなぁ。それを言うなら桃園の方が女の子っぽいと思う」
「うるさい! 僕は、ちゃんとした男の子だ!」
うっかり、桃園の逆鱗に触れてしまったみたいね。何なの。ほんと、この子って短気なんだな。
「よく聞けよ。菊ちゃんをたぶらすかなよ。菊ちゃんは純粋なんだからな! 女なんてみんな卑怯で嘘つきだ! 何をたくらんでいるのか知らないけど、何で、おまえは男のフリなんかしているんだよ!」
「……男のフリ?」
ある意味、正しいかもしれない。
と、そこにフラッと紺色の作業服姿の高齢の掃除のおじさんが入ってきた。学園のトイレの清掃葉は業者さんが行なうことになっている。彼は、あたしと桃園の顔を見つめながら慌てふためいている。
「失礼したました! こんなところに可愛い女の子がいるとは知りませんでした!」
しかし、外に出ようとして振り向いたおじさんは、大事な点に気付いたようだ。ゆっくりと、確かめるように尋ねてきたのである。
「あのう、確か、ここは男子校でしたよな……」
慌てて老眼鏡をかけて、あたしと桃園の顔を見つめている。どっちも、女の子っぽい顔をしているから迷うよね……。だけど、二人ともズボンを穿いている
「はい、僕達、どちらも男の子ですよ」
言いながら、あたしはクスッと笑ってしまった。
「お掃除の邪魔してすみません」
あたしが先に出ると、幸い、桃園は掃除のおじさんに突っかかることなく、そのまま出て行ったのだが……。
やれやれという気持ちのまま、あたしは肩をすくめた。桃園みたいに敏感な奴には要注意だ。
この先、男の子として暮らさなければならない。
「いずみってお姉さんにソックリだな。おまえってさ、黙ってると女みたいに見えるぞ」
こいつは、インスタの女子と目の前にいるあたしが同一人物だとは考えもしないのね。単純馬鹿そのものだわ。
だが、みんながみんな菊太郎のように鈍い訳ではないようである。
それは、転校初日の放課後の事だった。桃園という生徒が嫌味ったらしい声で話しかけてきたのだ。あたしがトイレから出てくると鬼のように形相でカツカツと詰め寄ってきたのである。
「おい、山田いずみ! あんた、みんなに嘘をついているだろう? あんたは女だよな」
ビクッ。動揺してしまうが決して悟られてはいけない。
桃園は背が低くて、なかなかの美少年だわ。クルンとした茶色の天然パーマは欧州の男の子みたいにお洒落。
見た目はラブリーなのに少し癇癪持ちのようである。
「僕には分かるんだぞ! 男のフリしようとしても僕の目は誤魔化せないぞ」
「そうかなぁ。それを言うなら桃園の方が女の子っぽいと思う」
「うるさい! 僕は、ちゃんとした男の子だ!」
うっかり、桃園の逆鱗に触れてしまったみたいね。何なの。ほんと、この子って短気なんだな。
「よく聞けよ。菊ちゃんをたぶらすかなよ。菊ちゃんは純粋なんだからな! 女なんてみんな卑怯で嘘つきだ! 何をたくらんでいるのか知らないけど、何で、おまえは男のフリなんかしているんだよ!」
「……男のフリ?」
ある意味、正しいかもしれない。
と、そこにフラッと紺色の作業服姿の高齢の掃除のおじさんが入ってきた。学園のトイレの清掃葉は業者さんが行なうことになっている。彼は、あたしと桃園の顔を見つめながら慌てふためいている。
「失礼したました! こんなところに可愛い女の子がいるとは知りませんでした!」
しかし、外に出ようとして振り向いたおじさんは、大事な点に気付いたようだ。ゆっくりと、確かめるように尋ねてきたのである。
「あのう、確か、ここは男子校でしたよな……」
慌てて老眼鏡をかけて、あたしと桃園の顔を見つめている。どっちも、女の子っぽい顔をしているから迷うよね……。だけど、二人ともズボンを穿いている
「はい、僕達、どちらも男の子ですよ」
言いながら、あたしはクスッと笑ってしまった。
「お掃除の邪魔してすみません」
あたしが先に出ると、幸い、桃園は掃除のおじさんに突っかかることなく、そのまま出て行ったのだが……。
やれやれという気持ちのまま、あたしは肩をすくめた。桃園みたいに敏感な奴には要注意だ。
この先、男の子として暮らさなければならない。