だから、あたしは
3 今日から男子校
 ということで、夏休みは終わり、いよいよ奇妙キテレツな学校生活が始まった。

 ほんと、何なのよ。この展開は。まるで、安っぽいライトノベルの世界のようだわ。正真正銘の女の子が勝手に男子になっちゃっているんだよね。

 君の名は。っていう有名なアニメみたいに誰かと入れ替わっているなら、境遇を共有できるけれど、あたしの場合は自分一人で悩むしかない。

 初登校の日。中高一貫の私立学校の高等部の一年A組に入ると、転校生への視線が突き刺さった。ああ、ここって男子しかいないんだな。思春期特有の男臭さを肌で感じるわ。

「みんなー、注目! 聞いてくれ。今日からクラスメイトになる山田いずみ君だ。日本の生活には不慣れなようなので、どうか、みんなで彼を助けてやってくれ」

 当たり前だけど、全員が男である。一年C組の野郎どもは好き勝手なことを呟いている。

「あいつ、女みてぇな顔だぜ。わー、髪も、なっげぇな」

「君、可愛いね、いっずみちゃーん! 俺の隣に座らなーい? なーんちゃって」

「やべっ! マジ、可愛いぜ。桃園よりも可愛いぞ」

 桃園という男の子は誰かしらと探すまでもなかったわ。教室の片隅に女の子みたいに可愛らしい男子がいる。確かに、ジャニーズジュニアにいそうな感じよね。

 この私立学校は、普通科、国際交流科、健康スポーツ科学科の三つのコースに分かれている。国際交流学科に行くと外国人留学生がけっこうな割合でいるという。

 あたしは普通科に編入した。マレーシアでは日本人学校に通っていたし、テレビ番組も日本のものを見ていたので帰国子女って感じでもない。ネットを介して、日本の流行りはリアルタイムで把握している。

 電子書籍を読みまくっているので、けっこう国語は得意だ。ただし、日本の歴史に関しては自信がないのだ。とりあえず、高校では世界史を選択する事にした。

 休み時間、真っ先に陽気な顔で声をかけてきたのは、ディズニーのプーさんっぽい風貌の萩原菊太郎だった。

「ようよう、聞いたぜ。おまえ、剣の家にいるんだよな。おっ、そうだ。おまえ、SNS、何かやってるのか」

「うん。やってる」
  
 ついつい、あたしは自分のインスタを見せてしまったんだけど……。

「誰だ。この美少女は?」

 もちろん、そのアイコンはあたし。おっと、これはマズイわ。アカウント名はYAMADAにしてあるので誤魔化しが効くのよ。あたしは咄嗟に嘘をついた。

「あっ、これ、双子の姉さんだよ。えーっと、アリスって言うの」

 適当な嘘をつくと、菊太郎が嬉しそうな顔で言った。

「へーえ、マジで可愛いよな。アリスさんと付き合ってみたいな」

「やだーー。あたしにそんな事を言われても困る」

「んっ、あたし?」

< 8 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop