冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
リリアンとロジアネは一つ違いの姉妹である。ただし、血のつながりはない。
元々母と二人で暮らしていたリリアンは、十三歳のときにロジアネと出逢った。母とロジアネの父が再婚することになったためだ。
ロジアネの父は実業家で、義理の娘であるリリアンのことも可愛がってくれた。
彼はリリアンに家庭教師をつけ、読み書きができるようにしてくれた。そのおかげもあり、リリアンは今の仕事に就けている。
母と義理の父。さらに可愛い妹。リリアンはとても幸せだった。
――十八歳のあの日までは。
母と義理の父は大きな事故に巻き込まれ、命を落とした。しかも、葬儀のどさくさに紛れ、財産を持ち逃げされてしまった。犯人の目星はついているが、未だに捕まっていない。
さらに多額の借金の発覚。リリアンとロジアネの人生はいばらの道となった。
でも、リリアンは義理の父やロジアネを恨んだことはない。五年という短い間でも、幸せな家族だったのだから。
リリアンは借金を少しでも返すため、王宮で女官として働き始めた。
庶民階級出身の女官はほとんどいない。しかし、リリアンは女官の試験に合格、王宮女官として働き始めた。
あれから四年。リリアンは王宮の下町にアパートを借り、ロジアネと二人で暮らしている。リリアンの稼ぎはほぼすべて借金返済に消えるので、生活費はロジアネが稼いでいる形になる。
ロジアネは家のことに仕事のこと。たくさんの負担があるのに、文句ひとつ言わない。
むしろ「お義姉ちゃんのほうが大変だから」という。
だから、リリアンはロジアネのことだけはなんとしてでも守りたかった。苦労を背負うのは――自分だけでいい。
(だって、私はお姉ちゃんだから)
リリアンは、いつも自分に言い聞かせているのだ。