冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
 着替えを済ませ、私室で身だしなみを整える。部屋の扉を開けると、台所に立つロジアネが振り返った。

「夜はどうするの?」
「適当に済ませるつもり」
「じゃあ、軽いものを作るから持っていきなよ」

 リリアンは常々ロジアネをすごいと思っている。

 お嬢さま育ちなのに、この貧乏生活を悲観していない。さらに適応力が素晴らしく、家事などもあっさり覚えてしまった。

 リリアンの家事能力など未だに底辺なのに。

「なんか迷惑かけてごめんね」

 水差しからカップに水を注ぐ。

 そんなリリアンを見つめつつ、ロジアネは大きくため息をついた。

「別にいいよ。お義姉ちゃんは働いてくれてるし」
「……けど、生活費はロジアネの稼ぎじゃない」
「私の生活費だけだったら、こんなにいいアパート借りることができないよ。お義姉ちゃんのおかげ」

 アパートの家賃はリリアンが払っていた。

 二人にそれぞれ私室があり、リビングとベランダがある。ここらの住宅では比較的新しい建物であり、家具なども備え付けだ。

 もちろんその分家賃は高い。

「それに、私たち……その、家族じゃん」

 ロジアネが照れたようにうつむいた。

 その姿が可愛くてたまらなくて、リリアンは抱き着こうとした。だが、あっさりと躱されてしまう。

「ほら、さっさとテーブルに運んでよ!」

 これは明らかに照れ隠しだ。

 リリアンはわかったが、口には出さない。

 口に出すと間違いなくロジアネは真っ赤になる。彼女はツンケンしているが、案外照れ屋なのだ。
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