呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「そ、そんな……! そ、そこまでは……。望んでいません。お金もかかりますし……」
「妻の笑顔を引き出せるのであれば、金に糸目はつけない」
「だ、駄目ですよ! 不必要な贅沢は、いけません!」
「イブリーヌは、俺のすべてだ。君を喜ばせるためなら、なんでもする」
「陛下……」

 彼は三年間、イブリーヌへ会いにすら来なかった。
 その罪滅ぼしを、兼ねているのかもしれない。

(陛下にとって私とスイーツを一緒に食べるのは、必要なことなんだ……)

 夫との間に温度差があるのは、当然のことだと受け入れるべきだ。
 長年虐げられてきた彼女と、何不自由なく過ごした彼と価値観が同じである方が、問題なのだから……。

「け、ケーキは……っ。とても、おいしいです。こうして、陛下と食事をできるなど、思わなかったので……」
「ああ」
「毎日でなくたって、構いません。一年に一回くらい……。また、こうして……。一緒に……」
「喜んで」

 イブリーヌの提案を二つ返事で了承したオルジェントは、彼女に冷たい態度を取っていたのが嘘のように優しい笑顔を浮かべた。

(こんな生活が、いつまでもずっと、続けばいいのに……)

 彼女はおいしいスイーツを堪能しながら、夢のような彼とのデートを終えた。
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