呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「食べないのか」
「い、いただきます!」

 妻のフォークから唇を離した夫に指摘を受けたイブリーヌは、緊張の色を隠しきれない様子を見せながら、ぱくりと口の中にチョコレートケーキを入れた。

「すごく、おいしいです……!」

 カトラリーを唇から離した彼女は、もぐもぐと咀嚼を繰り返しながら。
 舌が蕩けてしまいそうなほど濃厚なチョコレートと生クリームの味を感じて、満足そうに微笑む。

「よかったな」
「はい! これほどまでに素晴らしいスイーツは、今まで一度も食べたことがありません……!」
「これからは、好きなだけ食べさせてやる」

 キラキラと瞳を輝かせて喜ぶ妻の姿が見れたのが、嬉しくて仕方ないのだろう。
 オルジェントは彼女が望むなら、何度だってここに連れてきてやると口元を綻ばせる。

 それに焦ったイブリーヌは、ブンブンと勢いよく両手を振って遠慮した。
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