呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「お父様! わたくしをオルジェント様の、第二婦人に推薦してくださいませ!」

 諦めの悪い彼女は客間へ繋がる扉を勢いよく開け放つと、来客対応中の父親に願い出た。
 まさか娘からそんな提案をされるなど思いもしなかった彼は、露骨に眉を顰めながら席を立つ。

「何を言っているんだ……。陛下から言われたのだろう。もう二度と、顔を見せるなと」
「そんなこと、言われていませんわ!」
「いや。娘の手綱はしっかりと握っておくようにと仰せつかっている。アメリが覚えていないだけだ」

 父親は娘を客間から追い出そうと、肩を掴んだが……。
 彼の手を勢いよく振り払ったアメリは、憤慨した様子を隠すことなく声を荒らげる。

「オルジェント様だって、わたくしとの結婚を望んでおりますもの!」

 この場にいるのが家族だけであれば。
 公爵も怒りを露わにする娘が落ち着くまで、放置していたかもしれない。
 だが……。
 ここにはまだ、来客がいる。

 これ以上醜態を晒すわけには、いかなかった。
 父親は普段の温厚な態度が嘘のように目元を釣り上げ、低い声で警告した。
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