呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
――春、夏、秋、冬。
何度季節が巡っても、オルジェントの隣にイブリーヌが並び立つ権利は得られない。
夫の隣にはいつだって、きらびやかなドレスを身に纏った金髪女性の姿がある。
彼女の扱いはいつまで経っても、変わらなかった。
寝室で一人、彼がやってくるのを待ち続けている。
(まるで、籠の鳥ね……)
栄養のついた食事を毎日3食きっちりと与えられたイブリーヌは、ミミテンス公爵家で暮らしていた時よりは随分と体調が回復したが――夫の不倫現場と思わしき光景を目にしてから、満足な食事すらも喉を通らなくなっていた。
『夫に不倫されたかわいそうな妻』
『生きている意味なんてないよね?』
『そんな男とは早く縁を切って。全部、めちゃくちゃにしよう』
彼女が弱れば、止めを刺そうと亡霊達が活性化する。
その悪循環の繰り返しは、イブリーヌの心を着々と蝕んでいた。
『イブリーヌ……。不安に思う気持ちはわかるよ。でも、ちゃんと食べないと……』
彼女が苦しむ姿を目にした白猫は、何度もオルジェントが彼女を愛していること、食事をきちんと取ってほしいと伝える。
だがその声を、イブリーヌほとんど認識できていなかった。