呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「とっても素敵な名案でしてよ! とっておきの作法を、わたくしが教えて差し上げますわね」

 同意の言葉が得られないまま。
 自画自賛をしたアメリは、喜々として皇妃に相応しき礼儀作法について語り出す。
 この言葉を受け、イブリーヌは難しい顔で首を傾げる。

(一体、何が目的なの……?)

 この女性にとって彼女は、邪魔な存在だ。
 敵に塩を送るような真似をしたって、メリットなどあるはずがないはずなのだが……。
 イブリーヌは言いようのない恐怖に怯えながら、アメリの紡ぐ声を聞き流す。

「よろしくて? 立派な皇妃になるためには見返りを求めず、自分の機嫌は自分で取れる、強い女性になるのが一番ですのよ!」

 そんな彼女の思考を読み取ったかのように。
 口元だけを綻ばせた女性の口は、止まらない。
 まるで暴走機関車のように。独りよがりなアメリの演説は続く。

「オルジェント様に話しかけられても、無視をしなくては駄目ですわ。彼は妻よりも帝国民を一番に愛し、守るべき使命を課せられた殿方ですもの!」

 イブリーヌが反論しないのをいいことに。
 夫婦仲を悪くさせようと目論む女性が、彼女に悪知恵を授けた。
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