呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「二度と、俺と妻に近づくなと警告したはずだが」
「オルジェント様は勘違いなさっておりますの! わたくしと生活をともにさえしてくだされば、その誤解が……!」
「アント公爵家との縁談が、進んでいるそうだな」
「ど、どうしてそれを……!?」

 オルジェントは皇帝だ。
 王族として、どの貴族が縁を結ぶかに関しても管理する必要があった。

(このような礼儀知らずと、長々話している時間がもったいないな……)

 早く妻と二人きりになりたいと願った彼は、驚くアメリに冷徹な笑みを浮かべて宣言してみせた。

「ヘスアドス帝国で、俺に知らぬことなどない」
「わ、わたくしは! オルジェント様以外と、結婚なんてしませんわ!」
「貴様と俺の意思。どちらが尊ばれるべきか――適切な教育を受けたのなら、わかるだろう」
「しかし……!」
「貴様の処遇は、追ってテランバ公爵家に伝える」
「オルジェント様……!」
「三度目はないぞ」

 オルジェントは苛立ちを隠せぬ様子で、イブリーヌを抱き上げたまま。
 寝室に向かって歩き出した。
< 150 / 209 >

この作品をシェア

pagetop