呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「わ、私……。声に、出していましたか……?」
『うん。オルジェントがこの場にいれば、よかったのに……。彼は本当に、タイミングの悪い男だよね』

 白猫が乾いた笑い声とともに、そう呆れるのは無理もない。

 イブリーヌがアメリに唆され、離縁を切り出したことで焦ったのか。
 彼は結婚当初に比べれば積極的に妻と触れ合い、ともにいる時間を作ろうとしてくれているが――。

(それだけで、充分だと思わなければいけないと……わかってはいるけれど……)

 肝心な時に、彼女のそばにはいないからだ。

「陛下がそばにいないと……。寂しいと感じるのは……。私が彼に、好意を抱いているから……なのですか……?」
『そうだよ。イブリーヌは、オルジェントとずっと一緒に居たいんだね』

 ハクマの声を耳にした彼女は、小さく頷いた。
 オルジェントのそばにいれば、亡霊の声がほとんどと言ってもいいほど聞こえなくなる。
 イブリーヌにとって、唯一人間らしい生活を送れる時間だからだ。
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