呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「私は、人間として……。陛下の、妻であり続けたいのです……」
『うーん。それは、オルジェントに伝えないほうがいいかな』

 素直な気持ちを打ち明けた彼女に、白猫は難色を示した。
 それがなぜなのかは、すぐにわかる。

『その発言は、オルジェントを利用しているようにしか、聞こえないからね』

 イブリーヌの彼に抱く恋心がまやかしなのではと、オルジェントが疑いかねない内容であったからだ。

 イブリーヌにとって夫は、自身に救いの手を差し伸べてくれる唯一の光だった。
 彼が妻からの愛を望むのであれば。
 それを叶えなければと躍起になるのは当然のことだ。

『イブリーヌ。君は、彼のどんなところが好き?』

 ハクマに問いかけられた彼女は、夫の姿を思い浮かべた。

『イブリーヌ』

 自身の名を呼ぶ低い声が脳内で再生された瞬間。
 気分が高揚していくのを感じる。

『俺の妻は、君以外考えられない』

 誰に何を言われようとも。
 絶対にイブリーヌを手放す気はないとばかりに、力強く彼女の細い身体を抱きしめる姿。
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