呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 だが――やはりコクマは公爵令嬢の言葉に、応える気はないようだ。
 イブリーヌの手のひらに自らの肉球を触れ合わせた黒猫は、彼女を安心させるように優しい声で褒め称えた。

『よく、できました』
「……っ」

 その言葉で我に返ったイブリーヌは、目の前の惨状に息を呑む。

「な、んで……。ど、して……?」

 アメリを亡霊達に襲わせたのは、完全に無意識だったのだ。

 悪気があったわけではない。
 こんなつもりではなかった。

 そんな言い訳を並べ立てたところで。
 イブリーヌが公爵令嬢を亡霊達に命じて傷つけたことは、変えようのない事実で――。

「ば、化け物……」

 現実を受け止めきれずに困惑するイブリーヌに、気を失う直前のアメリが放った言葉は――。
 彼女の人間として生きていたいと願う気持ちを、粉々に粉砕した。

「違、違う……。私、化け物なんかじゃ……!」

 深い絶望に苛まれた彼女が取り乱せば、この絶好の機会を逃すわけにはいかないとばかりに黒猫が囁く。

『そう。イブリーヌは今日から……。亡霊の、女王になるの……』

 瞳から大粒の涙を流したイブリーヌは――コクマに命じられるがまま。
 光の届かぬ漆黒の闇に、飲み込まれた。
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