呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(どうして……?)

 その声を聞いた瞬間に、心の中にポッカリと空いている穴が、塞がったような感覚に陥ったからだ。

『外の声に、耳を傾けないで』
『私達がいれば、イブリーヌは幸せでしょう?』
『あんな奴のことなんて忘れて、ここで大人しくしていようよ』

 ここに来てから一言も言葉を発していない黒猫が、イブリーヌを振り返る。
コクマが強い意志を感じさせる赤い瞳を彼女に向ければ、男性の声が遠のいた。

「イ――ヌ!」

 彼が自身の名前を呼んでいるであろうことは、すぐにわかった。
 だが、どうやらここにいる亡霊と黒猫達は、彼の声をイブリーヌに聞かせたくないようだ。

「どうして……遠ざけるの、ですか……」
『彼はイブリーヌの人生に、必要ない……』

 コクマは自分達だけがいればいいだろうと彼女へ伝えるように、頬擦りをしてみせた。

「――ブ……ヌ……!」

 黒猫の身体を優しく撫でつけていたイブリーヌは、遠くから男性の声が聞こえてくるたびに。
漠然とした不安が解消されていくのを感じる。
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