呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない

(こんな時ですらも、私を追いかけてくださらないのですね……)

　彼女はオルジェントの態度に、失望の色を隠せない。
　このような状況では、四肢を必死に動かして追いかけてくる白猫の声に、残念ながら耳を傾ける余裕はなかった。

(初めて手を差し伸べてくださった陛下を、好きになりたかった。もっと面と向かって話し合いたかったし、触れ合いたかった)

　イブリーヌの瞳からは、涙がこぼれ落ちる。

　それらは乾いた地面を濡らし、亡霊達が彼女を慰めるように闇のオーラを強めた。

(この人となら、幸せになれるかもしれないなんて。望んではいけなかったんだ……)

　イブリーヌの悲しみは悪しき魂の力を活性化させ、人々を襲う。
　彼女が進む道の上に咲き誇っていた花々は跡形もなく消え去り、亡霊達は恐ろしい笑い声を響かせる。

(もう、何もかもがどうでもいい……)

　全てに絶望した彼女は、こうしてヘスアドス帝国を飛び出した。