呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「落ち着け」
「たとえ愛されなくても。触れ合えなくても、言葉を交わすには人伝でなければいけなくても。私だけを見てくださるのでしたら、耐えられました」
「何を言っている」
「殿下は私に、おっしゃいましたよね。私は妾ではなく、正妻だと。その言葉を信じて、三年間も待ち続けた私が、馬鹿でした」
「……それは……」

 オルジェントは何か言いたげに眉を顰めると、苦しそうに唇を噛み締めた。
 その姿は言い訳を探しているようにしか見えず、イブリーヌの怒りは頂点に達する。

「陛下から別れを切り出せないのでしたら、私から離縁を申し出ます。今まで、ありがとうございました。その方と、どうぞお幸せに」

 口元だけに歪な微笑みを浮かべた彼女は金髪女性と夫の仲を一方的に祝福すると、抱きかかえていた白猫を離して踵を返す。

『イブリーヌ! 待って……!』

 彼は妻から別れを告げられたこの状況を、うまく理解できていないからだろう。
 この場から立ち去ろうとするイブリーヌを呼び止めることすらせず、大鎌の柄を握りしめたまま呆然と突っ立っている。
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