呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『人々が君を死神と称する理由が、わかった気がするよ』

 オルジェントの心を読んだ白猫は、呆れたように告げる。

(騒がしい猫だ……)

ハクマはある日突然、オルジェントの前に現れた。

『僕は悪しき魂を殲滅するために、やってきたのさ!』

人の心を読み、人間の言葉を喋る。
不思議な白猫が彼へ自信満々にそう宣言をしてきたのは、随分と前のことだ。

『オルジェント・ドゥム・アヘンドス。君は愛を知るべきだ』

 オルジェントがいつまで経っても、命令へ従わないからだろう。
 痺れを切らした白猫は、アヘルムス国へ向かわなければならない理由を淡々と述べた。

『アヘルムス国には、亡霊達に慕われる一方で、人間から嫌われている女性が暮らしている。彼女は君のように抵抗する力を持っていないから、酷い扱いを受けているようだ』

 白猫の言葉を耳にしたオルジェントは、露骨に眉を顰めた。
 理解し難い単語が、山のように紡がれたからだ。
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