呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「あ……」

 彼の視界へ真っ先に飛び込んできたのは、感情の読み取れない黒い瞳と人形のような美しい顔であった。
 腰まで長い黒髪が、彼女の神秘性をより高めている。

(綺麗だ……)

 オルジェントは思わず息を呑み、この世のものとは思えぬ彼女の美貌に恐れ慄いた。

「銀の、髪……」

 それはどうやら、イブリーヌも同じであったらしい。

「綺麗……」

 銀髪のオルジェントを目にした彼女は、彼とまったく同じ感想を抱く。
 オルジェントに見惚れたイブリーヌは、ゆっくりと両耳から手を離した。

「そうだ。それでいい」

 オルジェントは不思議な感覚に苛まれた。
 欠けていたパズルのピースが、イブリーヌを目にした瞬間にピタリと嵌まったような感覚だ。
 彼は柄にもなく、自然と口元を綻ばせていた。

(この昂りは、一体なんだ……?)

 悪しき魂を斬り伏せ続けた際に感じる、高揚感とは異なる感覚に困惑しながら。
 彼女の全身から力が抜けたのを確認すると、警戒心を解くために自ら名を名乗った。
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