呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「貴様のせいで、俺の妻は深く傷ついた」
「わ、わたくしはただ……! 奥様よりも魅力的であると、知ってほしかっただけですわ……!」
「それが迷惑だと言っている」
「こうしてオルジェント様にアプローチを仕掛けているのは、わたくしだけではありませんわ! 他のご令嬢にも、同じ処遇を……!」
「俺に指図するな。この場で今すぐ、その命を散らしたいのか」
「ひ……っ」

 さすがに鋭利な刃物を突きつけられ、命を奪うと脅されたら。
 強くは出られないのだろう。
 アメリは引き攣った悲鳴を上げると、さすがにそれ以上彼に迫ってくるようなことはなかった。

(自分の命よりも、俺の妻になることを優先するような輩ではなくて助かった……)

 オルジェントは苛立ちを隠せない様子で舌打ちをすると、大鎌を背中に背負い直し踵を返す。

「二度と、俺と妻に近づくな」
「オルジェント様……!」

 アメリの何か言いたげな呼びかけになど、応えるわけがない。

(俺は必ず、イブリーヌを取り戻す)

 彼は己を奮い立たせると、悪しき魂の気配を追い、ヘスアドス帝国を出た。
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