呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「ひゃ……っ」
「しっかり捕まっていないと、落とすぞ」

 夫の指導を受けた妻は、彼と出会った時のことを回想する。

(こんなこと……。三年前にも、あったような……)

 あの時も確か、こんなふうにオルジェントに抱き上げられて移動をしていた。

(しっかり捕まっていないと、振るい落とされてしまう……)

 そう怯えたイブリーヌは、離れないように強く。
 彼の首元に抱きついた。

「そうだ。それでいい」

 棚の上に置かれた大鎌を回収して背中に背負った彼は、朝食を取るためにキッチンへ向かった。
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