呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「陛下のお心が、もしも……。別の女性に、あるのでしたら……」
「ない」
「え、遠慮は……いりません……。その、私は……他国の人間ですし……」
「だから、どうした」
「陛下に見初めて頂いたことは、奇跡に近いのです……。第一夫人として、迎えてくださっただけで、充分、ですから……」
イブリーヌは夫の機嫌を損ねぬように、最大限譲歩したつもりだった。
(本当は、もっと……。相思相愛の夫婦になりたい、なんて……。願ったら。陛下の、迷惑になる……)
彼の妻を名乗り、こうしてそばにいられるだけで充分だと言う彼女の気持ちは、嘘偽りのない事実だ。
イブリーヌは必死に、自身の主張を声に出して伝えたのだが……。
「私よりも、綺麗で……。ヘスアドス帝国のことを知っている、女性の方が……」
「くどい」
心の奥底に眠る願望を見ないふりして言葉を紡いだ彼女に、オルジェントはピシャリと不機嫌な声とともに吐き捨てた。
(陛下を、怒らせてしまった……)
夫の態度を間近に確認した妻は、これ以上言葉を重ねたら大変なことになると悟り、口を閉ざす。
「ない」
「え、遠慮は……いりません……。その、私は……他国の人間ですし……」
「だから、どうした」
「陛下に見初めて頂いたことは、奇跡に近いのです……。第一夫人として、迎えてくださっただけで、充分、ですから……」
イブリーヌは夫の機嫌を損ねぬように、最大限譲歩したつもりだった。
(本当は、もっと……。相思相愛の夫婦になりたい、なんて……。願ったら。陛下の、迷惑になる……)
彼の妻を名乗り、こうしてそばにいられるだけで充分だと言う彼女の気持ちは、嘘偽りのない事実だ。
イブリーヌは必死に、自身の主張を声に出して伝えたのだが……。
「私よりも、綺麗で……。ヘスアドス帝国のことを知っている、女性の方が……」
「くどい」
心の奥底に眠る願望を見ないふりして言葉を紡いだ彼女に、オルジェントはピシャリと不機嫌な声とともに吐き捨てた。
(陛下を、怒らせてしまった……)
夫の態度を間近に確認した妻は、これ以上言葉を重ねたら大変なことになると悟り、口を閉ざす。