琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
「やっぱりここにいたか」
「え?社長?」
店の前の歩道に一際目立つ男が立っていて私は瞬きを繰り返してしまう。
ライトブラウンの髪に宝石みたいに明るいアンバーな瞳。
肩幅が広くて長身。高級スーツに整った顔が乗っているから目立つことこの上ない。
東京の街に外国人が増えたとはいえ、この容姿では目立たないはずが無い。
行き交う人のほとんどが彼の顔を見ていく始末だ。
「約束は大政ビルじゃ?」
現地集合。
メールにもそう記載があったし、滉輔さんからもそう聞いているけど。
「迎えに行こうと思って会社に電話したらもう出たと聞いて。滉輔がお使いを頼んだと言っていたからたぶんそういうことかなと思ってね」
社長が薄らと笑い私が出てきた店の奥に目を遣った。
「あいつらも懲りないね」
「そうですね」
「犬も食わないはずなのにどうして君はいつも巻き込まれているんだ?」
夫婦げんかは犬も食わない
うちの社長はアメリカ生まれアメリカ育ちの外国人だけど、そんなことわざも知っているくらいこの国に馴染んでいる。
いやもうびっくりするほど。たぶん私が知らない四字熟語とかも絶対知ってる。
「私も食べたいわけでは無いんですよ?」
親友とその夫の夫婦げんかに巻き込まれているだけであって積極的に食べに行っているわけではない。
ただ親友とその夫には大きな恩があり親友の夫は自分の上司で毎日顔を合わせているからーー仕方なくだ。
「君は人がいいんだな」
そういうわけでは無いのだけど。
でも言い返すことはせず曖昧な笑みを浮かべて見せると社長は肩をすくめる。
「褒めてないからな」
「わかってます」
子どもじゃ無いのだからそんなことはわかっている。
社長と知り合って2年半。妻になって2年半。
けれど10才の年の差がある彼から見た私は成長しない子どものままなのだろう。
「社長、お車は?」
周囲を見てもそれらしき車は無い。
「返した。商談が終わったら呼ぶかタクシーを使う」
「でもここから大政ビルまではーー」
まだ距離があると言おうとしたけれど、社長が私の言葉を遮る。
「たまには夫婦で街歩きもいいだろう」
えーっと?
幻聴かな?
身重差のため社長の顔を見上げながら首を傾げると社長が真顔で頷いた。
「最近君を伴って出歩かなかったから私たち夫婦の不仲説が出ているらしい。周囲がうるさくなる前に手を打つ必要がある」
ーーそういうことですか。
確かに今年に入って公の場に二人で顔を出したのはどこかの大企業のご子息とご令嬢の婚約パーティーだけだった。
それもほんの少し挨拶回りをしただけで妻の体調が優れないという謎の理由で早々に引き上げたし。
自慢じゃ無いけど健康には自信があるし、あの日の体調もよかった。だから妻の体調がっていうのは夫が早く帰りたかった言い訳でしかない。
彼の帰りを待つ誰かのためだったのかもしれない。
そのまま私は自宅マンションとされている部屋に送られ、彼はそのままどこかへ行ったのだった。
「二人で表参道を歩くだけで不仲説が払拭されると?」
冷ややかに笑ってやると何を思ったのか社長の右手が私の左手を掴んだ。
掴んだ?
いやこれ恋人つなぎってやつじゃない??
「表参道から原宿までのブランドショップが並ぶメインストリートを手を繋いで仲良く歩こうか、可愛い奥さん。たまには夫婦の会話も必要じゃないかな」
「・・・・・・かしこまりました」
手を振りほどくのを諦め隣に並んだ。
「え?社長?」
店の前の歩道に一際目立つ男が立っていて私は瞬きを繰り返してしまう。
ライトブラウンの髪に宝石みたいに明るいアンバーな瞳。
肩幅が広くて長身。高級スーツに整った顔が乗っているから目立つことこの上ない。
東京の街に外国人が増えたとはいえ、この容姿では目立たないはずが無い。
行き交う人のほとんどが彼の顔を見ていく始末だ。
「約束は大政ビルじゃ?」
現地集合。
メールにもそう記載があったし、滉輔さんからもそう聞いているけど。
「迎えに行こうと思って会社に電話したらもう出たと聞いて。滉輔がお使いを頼んだと言っていたからたぶんそういうことかなと思ってね」
社長が薄らと笑い私が出てきた店の奥に目を遣った。
「あいつらも懲りないね」
「そうですね」
「犬も食わないはずなのにどうして君はいつも巻き込まれているんだ?」
夫婦げんかは犬も食わない
うちの社長はアメリカ生まれアメリカ育ちの外国人だけど、そんなことわざも知っているくらいこの国に馴染んでいる。
いやもうびっくりするほど。たぶん私が知らない四字熟語とかも絶対知ってる。
「私も食べたいわけでは無いんですよ?」
親友とその夫の夫婦げんかに巻き込まれているだけであって積極的に食べに行っているわけではない。
ただ親友とその夫には大きな恩があり親友の夫は自分の上司で毎日顔を合わせているからーー仕方なくだ。
「君は人がいいんだな」
そういうわけでは無いのだけど。
でも言い返すことはせず曖昧な笑みを浮かべて見せると社長は肩をすくめる。
「褒めてないからな」
「わかってます」
子どもじゃ無いのだからそんなことはわかっている。
社長と知り合って2年半。妻になって2年半。
けれど10才の年の差がある彼から見た私は成長しない子どものままなのだろう。
「社長、お車は?」
周囲を見てもそれらしき車は無い。
「返した。商談が終わったら呼ぶかタクシーを使う」
「でもここから大政ビルまではーー」
まだ距離があると言おうとしたけれど、社長が私の言葉を遮る。
「たまには夫婦で街歩きもいいだろう」
えーっと?
幻聴かな?
身重差のため社長の顔を見上げながら首を傾げると社長が真顔で頷いた。
「最近君を伴って出歩かなかったから私たち夫婦の不仲説が出ているらしい。周囲がうるさくなる前に手を打つ必要がある」
ーーそういうことですか。
確かに今年に入って公の場に二人で顔を出したのはどこかの大企業のご子息とご令嬢の婚約パーティーだけだった。
それもほんの少し挨拶回りをしただけで妻の体調が優れないという謎の理由で早々に引き上げたし。
自慢じゃ無いけど健康には自信があるし、あの日の体調もよかった。だから妻の体調がっていうのは夫が早く帰りたかった言い訳でしかない。
彼の帰りを待つ誰かのためだったのかもしれない。
そのまま私は自宅マンションとされている部屋に送られ、彼はそのままどこかへ行ったのだった。
「二人で表参道を歩くだけで不仲説が払拭されると?」
冷ややかに笑ってやると何を思ったのか社長の右手が私の左手を掴んだ。
掴んだ?
いやこれ恋人つなぎってやつじゃない??
「表参道から原宿までのブランドショップが並ぶメインストリートを手を繋いで仲良く歩こうか、可愛い奥さん。たまには夫婦の会話も必要じゃないかな」
「・・・・・・かしこまりました」
手を振りほどくのを諦め隣に並んだ。