梓沢くん、拾っちゃいました。
 わたしはぴたりと足を止める。


 は、話しかけられた!?

 しかも、“拾ってくれないの? 桃瀬さん”って…。


 振り返るわたし。

「な、なんで苗字!?」

「え、同じクラスだし」


 た、確かに…。


「ひ、拾ってって、どこか怪我でも?」

「ううん、ただの家出」

「はぁ、家出」


 …え、家出!?


「い、家出はダメです。早く帰った方が…」

「帰っても一人だから」

「え」

「両親、ずっと仕事で帰って来ないし」


 梓沢くん、高校ではいつもみんなに囲まれてて憧れの存在なのに、家ではいつもぼっちなんだ…。

 ぼっちは寂しいよね…。


「…いいよ」

「え?」

 梓沢くんが聞き返す。

「きょ、今日だけなら」


 い、言ってしまった…。


「ほんと?」

「う、うん」

「ありがと」


 え、笑顔が眩しい…。
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