獣人姫は公爵家メイド──正体隠して仕えるも、次期公爵の想いには鈍感です

第十章:メイドの仕事場での出会い

リゼルさんの言う通り、次の日から早速メイドの仕事が始まった。
仕事はお部屋の掃除や食事の用意、片付け等々沢山あって、メイドたちは自分の仕事で大忙しだ。
中にはリゼルさんのような「専属メイド」も存在するそうで、公爵家の中ではゲルド様以外専属メイドがいるらしい。
『ゲルド様は女性を避けていらっしゃるの』
昨日、リゼルさんから聞いた言葉に疑問を感じつつ、頭の片隅に置きながら、私は仕事場へ向かった。
私は、暗い別館の扉を開けて中を見回す。
確かにこれは私じゃないと大変ね。
私がここに配属された理由は、暗いところでもはっきり見えるクロスペルを持っているからだ。
つまりはここは私にはもってこいの場所である。
「よしっ!」
気合いを入れて掃除を始める。
数時間後、最後の部屋へ入った時なんか違和感に気づいた。
なんか人がいる気がするんだけど…
おそるおそるベッドに近づくと中に容姿端麗な美青年が眠っていた。
ルライザ様から見せていただいた写真にそっくりだなと思わずにはいられない。
ティルト様よりも年上の見た目なのでこの方がゲルド様だと思った。
そっと出て行こうとしたが、床が軋む音がしてしまいゲルド様がぱっちり目を開けた。
彼は起き上がって、部屋の中を見まわした後に私の方向へと目を向けている。
「誰かいると思ったが、気のせいか...。」
彼はあくびをしてからまた、眠りについた。
私はほっと息をして、暗いことに感謝しながら今度こそ音を立てずにその部屋を後にした。
外はもうすっかり暗くなっており、大きなお月様が顔を出す。
そろそろ帰らなければならないような感じがした。
それから、帰り道に昨日もらった紙の内容を思い出す。
紙によると別館の掃除は、一週間に一度でいいとあったから明日は別の仕事が与えられるのかしら?
料理の配膳とか、お茶の給仕とか?
まだ、専属…にはなれないでしょうから。
そんなことを考えながら、私のメイド見習いとしての初日の仕事は終わった。
その時、ふと近くの門の方から視線を感じてパッと振り向く。
誰にもいないくて、はて?と首を傾げた。
なんだ...見間違いか...そう思いながら、私は恐怖を覚え、自分の部屋に素早く帰っていった。
しかし、門の影からそっと伺っていた者がいた。
そう、森の中にいたあの男だ。
「なかなか面倒なことになったな...チクショウ‼︎てかそもそも叔母さんが死んだ時にスピレを引き取っておけばよかったんだよっ‼︎!」
男は多少、父親にイラつきながらシルバエフェクト家を後にしたのだった。


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