獣人姫は公爵家メイド──正体隠して仕えるも、次期公爵の想いには鈍感です

第十一章:公爵と次期公爵との会話。

ここは書斎。公爵をはじめとする貴族や王族が書類を片付けられるために作られた場所である。
初めて会った日から、スピレを忘れられないシルバエフェクト家次期当主のゲルド・シルバエフェクトはとある願いをするためにわざわざ書斎へと赴いたのであった。
4回ノックをしてから「失礼します。」と入室する。
「どうしたんだ。ゲルド。お前からのお願いするのは、初めてではないか。」
公爵のパドル•シルバエフェクトは書類作成の手を止め、息子の顔をまじまじとみた。
「父さん。お願いって言うのは、専属メイドのことなんだ。つい先日入った黒猫の新人メイドはどうかなって。」
実はゲルドにはもう一つ目的があった。
差別をしない公爵家として有名なので表では愛想良くしていても、裏で嫌悪感を抱いているかも知れない。
そのため、彼女を守る強い後ろ盾になることである。
使用人たちも同様、普段は愛想良いと猫を被り、裏では嫌がらせの数々を繰り返しているものも少なくないだろうし、実際にはそれゆえに傷害事件も起きている。
幼い頃から、容姿と家柄、財力、クロスペル全ての群を抜いているため言い寄ってくる女が絶えなかった。
中にはスパイとしてや、手中に収めるため、関係を持つため等の真の目的がむき出しで、欲望が渦巻く、婚約者候補たちも混じっていた。
そして、そういう者たちを数えきれないほど見てきたゲルドにとって、誰かを守るための手段で一番手っ取り早いのは、その者を「専属」としてそばに置いておくことだ。
公爵もそれを知っているため、少し考えて答えた。
「わかった。だが、同じ条件で働いているゆえ、彼女だけ特別扱いとはいかん。だからここは、ラニンたち新人を含めた全てのメイド達にに試練を課して、最後までやり遂げた者を専属メイドに任命しようじゃないか。」
『ラニン』、それが彼女の名前だろうか。
それから、試練について具体的なことを二人で話し終えた後、ゲルドは、「失礼しました。」と言い、書斎を後にした。
一人残された公爵はニヤリとうすら笑みを浮かべた。
「あいつもとうとう初恋か...。確かに身分は申し分ないしお似合いだな。まあ、彼女の母親の実家が気になるが、恋に障害はつきものだ。よし、私も父親として影ながら応援しなくてはな。」
そう宣言した後、彼は再び自分の業務をこなし始めた。
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