獣人姫は公爵家メイド──正体隠して仕えるも、次期公爵の想いには鈍感です

第一六章:アユタヤの実の使い道

その後私はぼろぼろな状態で集合場所へ向かい、他の子の帰りを待つことになった。
私の格好を見た公爵様にはキョトンとした顔をされていたけれど、こうなった事の顛末を詳しく話したら大笑いされたのでお咎めがなかった。
他の子は見かけなかったけれど、他の子は同じものではないのかしら?と考え、公爵様に尋ねてみる。
「不貞を働かないように、全員別々のものを集めてもらうようにした。」
彼はにっと笑って答えてくれた。
実は事前に好きに使えた一人につき20シレットを受け取っていた。
他のメイドたちは何を買おうかと相談しているなか、私は鍵付きの宝箱型の貯金箱に投入した。
この額じゃ、豚の魔獣オークの串焼き数本くらいしか買えないし、お金をあまり使わない性格なので貯金箱の中に入れておく習慣が身についたのである。
(この貯金箱の鍵は私の首にかけているから盗まれる心配もないし、好きなだけ収納できる仕様になっているのだ。)
公爵様と他愛のない話をする事数分、メイド達がぞろぞろと戻ってきた。
その手には真珠や宝石、厚手のワーウルフのマフラー等々が入った箱を持っていた。
一人ずつ、所望のものを見せに行き評価をもらう。
評価をもらったメイド達数人がコソコソ言っている声が聞こえてきた。
「早いからって新入りが専属メイドになれるわけないのにね。」
「しかも見た目があれじゃ、見限られるのも時間の問題でしょ。ってか何よあの実。」
クスクスという声があちこちから聞こえてくる。
ベテランのメイドに新入りメイドが刃向かえるわけもなく、その言葉に口を噛み締めて耐えるしかない。
その時、ドカドカという足跡と共に怒鳴り声が響く。
「お前らぁぁぁぁぁ!!今の言葉もう一度言ってみろぉぉぉぉぉ!!!!!」
それに加えて顔を真っ赤にしながら怒りを露わにする公爵様にメイド達は震え上がる。
彼女達は土下座して許してもらうように頼んだが、陰口を叩くような人を専属なんてとんでもないという理由で、出世の道は完全に絶たれることになった。
さて、私が持ってきたアユタヤの実の使い道については居残りで説明を受けた。
アユタヤの実は見た目は焦茶色の皮をした地味な物だが、中の身は宝石のような見た目が特徴の不思議な実。
そして、ラビリスゲル王国初代国王に力を授けた女神ファルティナ様の神聖なる捧げ物になるらしい。
汁はアクセサリーを錆びないようにアクセサリーをコーティングするために使われるらしい。
あと三ヶ月程で神聖祭が行われるときのアクセサリーに使うらしい。
結果は三日後、手紙で知らせるということで仕事に戻ってよしと許しを得た。
私はようやく慣れてきた仕事を黙々こなしながら、神聖祭の想像を膨らませた。
外出許可を申請して通ったら行けるようになるのかも、などと考えながらその日の仕事は終えた。
「ゲルド様はどんな格好をなさるんだろう…」
就寝前にぼそっ一人で呟く。
実はゲルド様が少々気になっていたこともあってか、顔が赤くなるのを感じる。
それを隠すかのように、私は横になって布団に潜りこむのであった。


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