貴方ともう一度、恋の夢を
 変わらず強い雨。
 そんな中で私は、傘もささずに橋の上に立っていた。


 下を見れば、とんでもない濁流。
 水に迫られているようで、恐怖を感じる。


 危ないし、離れないと。


 そう思っているのに、手首も足首もなにかで縛られているせいで、動けない。


「水神様、どうかお鎮まりください!」
「この娘を生贄といたします!」
「どうか!」


 背後から、大人たちの声が聞こえた。大人たちが天に希う声に、耳を塞ぎたくなる。


 ああ、そうか。ようやく理解した。


 桜子に押し付けられたのは、花嫁だなんて可愛いものではなかった。


 私は今から、死ぬんだ。


 夢だとしても、それは嫌だな……


「桜子!」


 その名に反応して振り向くと、あの人が、黎夜さんが大人たちに押さえつけられている。

 あのときみたいに優しい表情ではなくて、泣き叫ぶような顔。


 桜子は本当に黎夜さんに愛されていたんだ。


 そう感じるほどの表情と声だった。


「ごめんなさい、黎夜様……ごめんなさい……」


 雨が地面を打ち付ける音にかき消されてしまうほどの声量。
 きっと、彼には届いていない。


 黎夜さんは大人たちに抑え込まれながら手を伸ばす。


 けれど、それは私に届くことなく、私は川へ吸い込まれて行った。



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