好きになったらダメなのに、
見上げると、そこにはすごく見覚えのある顔が居た。
「あー、ほんとだ。ごめんごめん。俺ちょっとタバコかってくるわ。」
虫の居所が悪そうな顔をしながら、私の手をパシッと離し、そそくさとお店を出ていった。
さっきまで強く掴まれていた先輩の手から逃れた私はふらついて、結果的にその男に腰を支えてもらう体制になってしまった。
多分さっきまで飲んでいたウーロン茶は、わざとウーロンハイにされていたに違いない。
アルコールのせいで身体が上手く動かせなくなって、フワフワする。
いやそんなことはどうでも良くて…
「…何してんの白石。」
「…そっちこそ何しに来たのよ、」
目の前にいるのは間違いなく、絶対に、
同じ高校だった西宮 颯だ。
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私達は居酒屋から出ると、少し歩いた所にある公園のベンチに腰掛けた。
フラフラで足元がおぼつかない私をおんぶしてここまで運んできてくれた。
「…ありがとう。助かった。」
西宮は、気まづくて目も合わせられない私に無理やり目を合わせながら話す。
「…ほんと、危なかった。俺がいなかったら白石絶対あの男に無理やりホテル連れてかれてたから。」
ご最もで何も言い返せない。
久しぶりに再会したくなかった相手と再会してしまったかと思えば、最悪の瞬間にあってしまった。
西宮は近くにある自販機で水を買って私に渡した。
「とりあえずそんな状態じゃ帰れないから、この水沢山飲んで酔い覚まして。」
「ありがとう。そうする。」
西宮は私の隣に座ると、30分ほど私の酔いが良くなるまで居てくれた。
その間、根掘り葉掘り今日の事を聞かれるんじゃないかとドキドキしていたが、何も触れてこなかった。
「…西宮、もうだいぶ酔い覚めてきたからもう大丈夫だよ。ありがとう」
そう声をかけるとこちらに振り向いて、顔をまじまじを見つめてきた。
「ん、さっきまで顔赤かったけどだいぶ良くなった。」
はぁ〜、と溜息をつきながら隣のベンチに腰かけ直した。
「もうあんな変な奴についてったりするなよ。」
「…気をつける。」
「とりあえず今日は家まで送る」
西宮のその一言にビックリして2度見した。
ただでさえ気まづいのに家まで一緒なんて…
「本当に大丈夫1人で帰れるから!!」
私はそう言うと1人で立ち上がり歩き出そうとする。
「まだふらついてるじゃん。送るよ。別に同じ最寄りだし。」
が、まだ完全に抜け切ってないらしく、おぼつかない身体を西宮が支えてくれた。
