天使の階段
私が傷つかないように、言葉を選んでくれている。

「ずっと、産むかどうか……悩んでたんだろう?」


ああ、統吾君なら。

今の私の気持ち、分かってくれる。


「統吾君。私……赤ちゃん、殺しちゃった。」

「違う!」

「違わない!産むまで生きてた!私のお腹の中で確かに!!」

「岩崎……」

統吾君は私の右手を、握ってくれた。

「自分を責めたらダメだ。今回は、産んであげられなかった……それだけだよ!」

私の目からは、止めどなく涙が零れた。


「……母親になるって言うのに、迷わずに堕ろして下さいって来るようなヤツらより、よっぽどマシじゃないか。岩崎は最後まで、悩んだんだ。他の人とは違う。」

「統吾君……」

「心も体も、十分に傷ついた。ゆっくり休んだ方がいい。」

統吾君は微笑むと、私の手を放し、立ち上がった。

「また学校で会おう。俺達、また同じクラスなんだぜ?」
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