天使の階段
統吾君は気付いてしまった。

私がここにいる事を……

「ご、ごめん!まさか今日は人がいるなんて、思ってなくて……」

慌てていい訳をする統吾君だけど、今の私にとっては、迷惑なだけだ。

「あっ、勝手に閉めてしまったけれど、少し開けた方がよかった?」

「……ううん。」

統吾君に背中を向けて、返事をした。

「岩崎……」

統吾君は私の側に来ると、どこからか椅子を持ってきて座った。

「…悩んでるんだったら、打ち明けて欲しかったな。」


私は統吾君の思いがけない言葉に、ゆっくりと振り返った。

「本当はこんな事、同級生になんて知られたくないって分かってるんだけどさ。俺、ここのナースステーションにはよく来るから、この病室にいる人はどんな人か、嫌でも分かっちゃって。」

統吾君は私よりも、苦しい表情をしている。

「普通の人は、2、3時間で帰るのに。1泊していくって事は……その……」
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