私は今日女になる
「私、大田としたい。」

よくもそんな言葉を言えたもんだ。

この男に、惚れてる訳でもないのに。


すると大田は、私を抱き返した。

「俺が、嫌だ。」

胸にナイフが刺さったように、痛かった。

「俺がおまえを、抱きたくない。」

私から大田の上着が、するりと落ちた。

「キスしてごめん。」

大田は私を引き離すと、胸のボタンを留めてくれた。


「私、魅力ない?」

そう聞くと、大田は首を横に振った。

「なあ、俺の事どう思ってる?」

一瞬、迷った。

「正直に言って。」

大田は私の肩に手を置いた。

「いい人だと思ってる。」

「その程度だろ。」

私は顔を上げて、ハッとした。

大田が悲しい顔をしている。

「大田?」

「俺、おまえが好きだ。」

身体がドクンと、胸打った。

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