2度目の初恋はセレナーデのように
〇歌音の部屋
ベッドに寝ころび、抱き枕を抱えて考え事をしている歌音。
歌音(……陽くん、やっぱり留学するのかなぁ)
やはり昼間の話が頭を占領していた。
歌音(ピアニストを目指すのなら留学は絶対にいい方向に向かうのは分かっている)
歌音(陽くんが留学したいっていうのなら、応援するつもりではある。……でも)
歌音「また置いていかれるのはイヤだなぁ」
特にお互いの心を知った後だとその気持ちも強くなってしまった。
思わずため息がこぼれ、ごろんと寝返りをうつ。
歌音(……付き合うまでの期間で覚悟を決めたはずだったんだけどな)
けれどこうして話が現実味を帯びてくると、やはり不安になってしまう。
歌音「素直に応援してあげられないなんて私、可愛くないなぁ。……といっても相談もされていないから何ともいえないけどさぁ」
というか、相談しようにもできなかったのかもしれない。
だって陽暁なら、こんな歌音の心を見抜いていただろうから。
歌音「……」
そんな風に考えるとそんな気がしてきてしまった。
そのとき携帯が着信を告げた。
歌音「キャ―――!?」
考え事をしていたから驚いてベッドから転げ落ちる。
ドシーンと派手な音がした。
歌音「う~! いったーい。もう! 誰よ! ……あ」
着信画面には『陽くん』の文字が。
慌てて出る歌音。
陽暁『突然ごめんねノンちゃん』
歌音「ううん。声聞きたいなって思っていたから大丈夫。どうしたの?」
陽暁『ほんと? 嬉しいな。そうそう、再来週の日曜って空いてるかなって思って』
歌音「再来週? ……空いてるけど」
12月中旬の土日だ。
自分は受験が控えているので勉強で潰す予定だったが……。
陽暁『クリスマス前に選抜があるんだけどさ、一般視聴もできるんだ。僕も出ることになったから、よかったら来てくれないかなって思って』
歌音「選抜って……国際コンクールに出られるかもってやつ?」
陽暁『なんで知って……ああ、みりあから聞いた?』
歌音「うん。……あのさ、陽くん」
陽暁『ん?』
歌音「……っ」
――もしも選抜に選ばれたら、留学しちゃうの?
なんて直接聞くのははばかられて言葉が詰まる。
歌音「……ううん。一人だとなんか寂しいから、誰か誘ってもいい?」
陽暁『もちろん。選抜は夜だから一人だと危ないし、誰かと来てほしいな』
歌音「わかった。そうするね」
結局本質のところを聞くことはできず、通話を切ってしまった。
一人になった部屋に歌音のため息がこぼれた。