【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……シェリル、あのな」
「は、い」
「アネットと俺は、別に連絡を取り合っているわけじゃない」

 旦那様は神妙な面持ちでそう告げてこられると、私の手を握ってこられた。

 ぎゅっと握られた手が、熱い。

「アネットの言っていることは、全部嘘なんだ。偽りなんだ」
「……それ、は」
「どうか、信じてほしい」

 私の目をしっかりと見つめて、旦那様がはっきりとそんなお言葉を口にされる。

 ……そんなこと、おっしゃらなくてもいいの。私は、旦那様のことを信じているから。

 ――そう、言えたらよかったのに。

「……わか、りました」

 私の口は、たったそれだけの言葉を紡ぐことしか出来なかった。

 素っ気なくも聞こえる声音でそう返事をすると、旦那様が少し眉を下げられる。

(私は、旦那様のことを信じているわ)

 そう思っても、どうしてかそれを口にできない。唇を動かして、自分の気持ちを伝えようとする。でも、はくはくと動くだけで、言葉にはならない。

「……シェリル」

 そんな私を見つめて、旦那様はどう思われたのだろうか。ただ、悲しそうな眼差しで私を見つめてこられるだけだ。

(違う。私は、旦那様のことをしっかりと信じている――!)

 気持ちは言葉にしないと伝わらない。

 それがわかっているので、私が口を動かそうとしたときだった。
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