【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「――シェリルっ!」

 私の身体が、ゆっくりと傾いていく。その瞬間、周囲に集まっていた使用人たちも慌て始めるのが視界に入った。

「シェリル、大丈夫か?」

 旦那様にそう問いかけられ、私はこくんと首を縦に振る。旦那様が受け止めてくださったおかげで、けがはない。

「大方、いつもの魔力不足でしょうね。……至急、奥様の私室を整えてきてください」
「は、はい!」

 サイラスがメイドに指示を出しているのが聞こえてくる。

 ……いつもの、魔力不足。そっか、もうそう思えるほどに――私は、倒れているのか。

(本当に、嫌だなぁ……)

 こんな風に倒れて、迷惑をかけることはもう嫌だ。

 そう思いつつぎゅっと旦那様の衣服の袖を握れば、旦那様が私に顔を近づけてくださった。

「……わた、し」
「……あぁ」
「なんとか、したい……」

 消え入りそうなほど小さな声で、私はそう告げる。もうこんな状態、こりごりだ。だから、私はこの状態を何とかしたい。

 ――なんとかして、この国の土を守りたい。

「シェリル……」

 旦那様が、今にも泣きそうな表情を浮かべられる。その表情を見ていたくなくて、私は目を伏せた。

「……なん、とか……」

 私しか何とか出来ないのならば、私が何とかするしかない。

 そういう意味を込めて旦那様の衣服の袖をぎゅっと握れば、旦那様は目を瞬かせていらっしゃった。

「……あぁ、そうだな」

 そして、しばらくして。そんな風に声を上げてくださる。

「俺は、シェリルの意思を、尊重したい……」

 小さく聞こえてくる、そんなお言葉。

「だから――……」

 意識が遠のいて、旦那様が何をおっしゃっているのか、もうわからない。ただ、サイラスと共に何かをお話ししているのだけはわかる。

「ですが」
「だが、シェリルが――」

 とぎれとぎれに聞こえてくる言葉に、反応を示すことは出来ない。

(……なんとか、しなくちゃ)

 このままだと――私は、この王国の土は。どうにか、なってしまうだろうから。

 手遅れになる前に――なんとか、しなくちゃ、ならない。
< 48 / 156 >

この作品をシェア

pagetop