【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……あの、旦那様、お忙しいのであれば、無理はなさらないでください」
「……いや、その」

 少しだけ小首をかしげてそう声をかければ、旦那様が狼狽えてしまわれる。

 ……結婚してしばらく経ったけれど、このお方は私を直視されないことがある。その頬が真っ赤に染まっているのを見ると、嫌われていないというのはわかるのだけれど。

「私は旦那様と一緒に暮らせるだけで、幸せですから。……なので、ご無理はされないでくださいませ」

 自分の気持ちを素直にそう伝えれば、クレアとマリンが私の後ろでひそひそと会話を始めていた。

「旦那様ったら、奥様のお気持ちを無視されるつもりなんですねぇ」
「なんて最低なのかしらー」
「本当に、ヘタレが治ったかと思えば今度は最低な人なんて……」
「いつか奥様に愛想を尽かされても知りませんわー」

 ……わざとらしい言葉だった。ついでに言うと、しっかりと聞こえるように割と大きめの声で会話をする二人。

 なんというか、旦那様が可哀想になってしまう。

「……おい、クレア、マリン」
「わぁ、私たちに矛先が向きましたよ!」
「怖いですー」

 クレアとマリンはそう言ったかと思うと、サイラスの後ろにわざとらしく隠れた。

 ……完全に、旦那様は二人に遊ばれている。まぁ、主で遊べるということは、それほどまでにいい職場環境ということなのだろうけれど。

「……で、どうなさるんですか、旦那様?」

 クレアとマリンを後ろに従えながら、サイラスがそう言う。

 そうすれば、旦那様は頭をガシガシと掻かれる。

「あぁ、もうっ! わかった、わかった! シェリルのダンスのレッスンに付き合うから……!」
「……ですが」

 何となく旦那様が不憫に見えてしまったので、私はそう声をかけた。すると、マリンが私の側に早足で寄ってくる。
< 5 / 156 >

この作品をシェア

pagetop