【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
(支え合うことが出来れば、それでいいんだろう)

 どちらかが弱っているときに、どちらかが支えれば。そして、その逆も。

 もしかしたら、それが理想の夫婦の形なのかもしれない。

 シェリルの手が、俺の手を握った。その小さな手が、少しだけ震えている。

「……だから、その、ですね」
「……あぁ」
「私のことを、どうか、忘れないでほしいのです」

 声が、震えていた。

「もしも、私がいなくなっても。……どうか、お願いします」

 ……多分、シェリルはすべてを知っているのだ。この国の現状も、自分の身体のことも。

 俺が思うよりもずっと、シェリルはたくましいということなのだろう。

「私に出来ることは、やりたいと思っております。……たとえ、この命に代えても」

 そんなこと言わないでくれ。

 のどまで出かかった言葉を、俺は飲み込む。

 シェリルだって、好きでいなくなるわけじゃない。好きで死んでしまうわけじゃない。

 ただ、自分に与えられた役割を全うしようとしているだけだ。……俺も、いい加減覚悟を決めなくちゃならない。

(シェリルを失うのが怖い。だから、何もかもを犠牲にしようとした)

 たとえ、それが一時しのぎにしかならないとわかっていても。シェリルを失うよりは、ずっとマシだと思っていた。

 彼女が辛い目に遭うくらいならば。俺が、苦労すればいい。そう思っていたのに……。

(その気持ちも、シェリルにはお見通しだったわけか)

 それを、悟った。
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