【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「あまり、好ましいお話ではないと、おっしゃっております」

 深々と頭を下げたクレアが、そう続ける。……好ましいお話じゃない。だけど、構わない。

「もしも、奥様が嫌ならば……と」
「……嫌じゃないわ」

 クレアの言葉に、私はゆるゆると首を横に振った。

「嫌じゃない。……むしろ、一番嫌なのは隠し事をされることなの」
「……奥様」
「だから、私はお話を聞いたうえで、受け留めるつもりなの。……自分の、身体のことも」

 ぎゅっと手のひらを握って、そう告げる。クレアが、息を呑んだのがわかった。

「それに、ほら。このままだと、じり貧じゃない。国も、いいほうには傾かない。……私の、身体も」

 多分、このままだと私の寿命は縮まっていくだろうな。

 それがわかるからこそ、私はそう付け足した。目を細めて、苦笑の表情を浮かべてクレアにそう言う。

 彼女は、痛々しい表情をしていた。

「奥様……」
「大丈夫よ。……なにがあっても、私は自分の立場を受け入れ、職務を全うするだけだもの」

 『豊穣の巫女』である以上、それは仕方がないこと。

 だから、私は受け入れる。すべてを受け入れて、そのうえで職務を全うするのだ。

「私、頑張るから」

 それは、まるで自分自身に言い聞かせているかのような言葉だった。クレアに対してじゃなくて、自分に対して。

 私も、まだまだ不安なのだろうな。

 そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされる。返事をすれば、扉が開いてマリンが顔を見せた。

「奥様、今、大丈夫でしょうか?」

 恐る恐るといった風に、マリンがそう問いかけてくる。だから、私は笑って頷いた。

「えぇ、大丈夫よ」

 そう返事をすれば、マリンが扉を大きく開く。そして、旦那様とロザリアさんがやってきた。二人とも、何となく神妙な面持ちだ。

「奥様。……単刀直入に言わせていただきます。……現在、この国の土の状況は、よくありません」

 ロザリアさんが真剣な表情でそう告げてきて。私は、静かに頷く。
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