【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
(だけど、失わないためには、この儀式を乗り越える必要も、あるの)

 私にしか、出来ないこと。私が行わないと、いけないこと。

 それがわかっていて、対処法がある以上。私がするべきことは一つなのだ。

「ロザリアさん。……どうか、私の訓練に付き合ってください」

 はっきりとそう告げる。ロザリアさんは、しばらくためらったのち深々と頭を下げてくれた。

「奥様が、望まれるのならば……」

 彼女が震える声でそう言う。……多分、ロザリアさんも不安なのだ。いや、違う。

 ……ここにいる誰もが、不安なのだ。サイラスも、クレアも、マリンも。……旦那様だって。

 そう思いつつ、私は先ほどから黙っている旦那様に視線を向ける。……旦那様は、何かをこらえるような表情をされていた。

「……シェリル」

 旦那様が、私の名前を呼ばれる。

 なので、私が旦那様に視線を送る。……その目の奥は、見てわかるほどに動揺している。

「俺は、シェリルを失いたくない」

 まるで縋りつくような声だと思った。その強面なお顔も、弱々しい表情を宿している。

「だから、この儀式を行うことには反対……だったんだ」

 今にも消え入りそうなほど、小さな声。私はただ、旦那様を見つめる。旦那様が、目を伏せられた。

「だが、俺に反対する資格なんてない。……シェリルが決めたことならば、応援するだけなんだ」

 そんな言葉が、私の胸に突き刺さる。……だから、私は寝台から下りた。

 そして、そのまま旦那様に近づいて……その大きな手を握る。
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