【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「私、頑張りますから」
「……シェリル」
「そのうえで、絶対にここに戻ってきます。……死んだり、しませんから」

 それは旦那様に伝えたようで、自分に言い聞かせる言葉だったのだろう。

 私は死んだりしない。必ず生きて帰ってくる。

 自分自身にそう言い聞かせないと、私も不安だったんだろうな。……なんて、思っても仕方がないのだけれど。

「……あぁ、そうか」
「私、旦那様の妻ですから。……旦那様を置いて、亡くなるなんて出来ません」

 きっと、このお方は私がいなくなったらダメになる。……十五も年上の男性にそう思うのは失礼かもしれないけれど、嫌というほどそれがわかるのだから仕方がない。

「今後も一緒に、過ごしたいから」

 出来る限り笑って、そう言う。……旦那様の表情が、ようやく和らいだ。

「……そうだな」

 けど、そうおっしゃった旦那様の声は何処となく涙声で。

 私は、彼に控えめに抱き着く。大々的には、抱きつけなかった。だって、視線が痛いし。

「私はきちんと帰ってきます。なので、どうか待っていてください」
「……あぁ」
「私の帰る場所は、旦那様の元なのです」

 ぎゅっと彼の衣服を握って、そう言う。……旦那様が、私の背中に腕を回してくださる。

 伝わってくる体温が、なんだか熱い。

「……ロザリア。シェリルのことを、どうか頼む」
「……承知、しております」

 旦那様がロザリアさんにそう声をかけた。ロザリアさんは、はっきりと、しっかりと。返事をくれた。

(私は、頑張るの。……そのうえで、絶対に生きて帰ってくるんだから)

 今までの私だったら、考えもしなかったこと。生きていたい。

 それを教えてくれたのはリスター家の人たちだから。

 私は彼らを悲しませないために、戻ってくるんだ。

 自分自身に、そう言い聞かせた。
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