【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「なんのお話でした?」

 小首をかしげて、旦那様にそう問いかける。

 すると、旦那様は「大したことじゃない」と答えられた。……大したことじゃなかったら、あそこまでサイラスは慌てないと思うのだけれど。

「シェリルの耳には入れなくていい話だ。気にするな」

 人間とは、気にするなと言われれば気になってしまう生き物。けど、今はそれよりも大切なことがある。

 その一心で、私は口を開く。

「あの、アネット様のこと、なのですが……」

 少し眉を下げてそう言うと、旦那様が露骨に眉間にしわを寄せられた。

「その、もう一度、しっかりとお話ししたいと思っております……」

 旦那様は割と強面なので、眉間にしわを寄せられると迫力がある。見慣れている私でも、少ししり込みしてしまうほど。

 でも、しっかりと言わなくちゃ。

「……あいつとは、何度話しても無駄だろう」
「そんなこと、ありません」
「……シェリル」
「確かに話し合っても分かり合えないときは、あります」

 けど、話し合って無駄だったと思うのと、話し合う前から無駄だと決めつけること。それは、全然意味が違うと思う。

(私がしっかりと向き合っていれば、あんなにもエリカとの関係がこじれることはなかった)

 エリカとの関係だって、今でこそ修復できている。だけど、そもそもこじれなければ仲のいい姉妹でいられたはずなのだ。

 エリカのことを、辛い目に遭わせずに済んだかもしれないのだ。

「ですが、私、後悔したくない」

 その後悔は、私の後悔である以上に。旦那様の後悔だ。

「アネット様の真意を知るべきだと思います。……一方的に嫌っているだけでは、ずっと堂々巡りです」
「……それは」
「あと、純粋に。……儀式に臨む前に、きちんと不安要素は取り除いておきたいのです」

 魔力のコントロールは繊細なものだ。術者の精神状態にも左右されると教えてもらった。

 だったら、不安要素は一つでも少ないほうがいい。
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