セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
第七章 すれ違う想いの行方は
 頭の中を悟のことだけが占め、どうやって帰って来たのかもわからないまま、自宅に帰り着いた志歩。

 真っ直ぐにリビングのソファーへと向かい、ドサッとそこに倒れ込む。すぐに瞳からつーっと涙が流れ落ちた。

 周囲に人がいる間はまだどうにか自分を保っていられたが、一人になるともう無理だった。

 たくさんの思いが胸の中を渦巻き、それらが涙を奥底から押し上げる。あまりに複雑すぎる感情に声を上げて泣くこともできず、ただほろほろと涙を流す。

 それは志歩にとって別れの儀式の始まりだった。

 記憶を失う前と失った後。二度も悟に大切にしてもらって、志歩の悟への想いはこれ以上ないほど膨らんでいる。彼が好きで好きでたまらない。

 悟の中にはずっと恵美理がいたのだろうが、それでも彼はちゃんと志歩のことも愛してくれていた。絶対に嘘ではなかった。もう一度悟に恋をした今、志歩にはそれがよくわかる。

 もしも悟の志歩への想いが完全に嘘だったならば、記憶を失った志歩が彼に再び想いを寄せることはきっとなかったはずだ。

 恵美理への想いを内に宿しながらも、それを押し殺して、志歩と向き合ってくれていたに違いない。

 我儘が許されるのならば、このままずっと彼のそばにいたい。恵美理のことは見て見ぬふりをして、悟の愛を独り占めしたい。そう望みたくなる。

 でも、悟を心から愛している志歩は、きっと耐えられない。悟の心の中に、本当に愛する別の人がいると知りながら、彼のそばにいることなどできるはずもないのだ。

 だから、悟への想いはこの涙に託して、出し尽くすのがいい。すべてをなくすのは無理だとわかってはいるが、それでも悟の前で平気なふりができるくらいには捨ててしまおう。

 そうしてもう一度決意を固めることができたなら、志歩は今度こそここを出て行く。悟の幸せを強く願って。
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