セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
「志歩」

 よく知っているその声に、志歩は勢いよく振り返る。

「っ、俊也……」

 案の定、そこには俊也が立っている。彼がいることに今の今までまったく気づかなかった。完全に油断していた。

 俊也はじりじりとこちらへ近づいてくる。

「志歩、この間は悪かった。いや、それだけじゃなくて、今まで本当にごめん。お前を傷つけたこと謝る」

 随分と殊勝な態度を取っているが、俊也が何を言おうと志歩の心にはもう響かない。

「……今さら謝られても遅い。もう何も聞きたくない」

 突き放すように言っても、俊也はまだ食い下がる。

「本当に悪いと思ってるんだ。それに本気で志歩とやり直したいと思ってる」

 本当に今さらだと乾いた笑いがこぼれる。

「やめて。聞きたくない」
「これは志歩のためでもあるんだ」

 俊也があまりにおかしなことを言うから、随分と冷たい声がこぼれた。

「は?」
「俺、聞いたんだよ。志歩の結婚相手が元の婚約者とよりを戻そうとしてるって。そんなやつのところに志歩を置いておけない。だから、俺と来てほしい。頼む。俺にはお前が必要なんだ」

 今、一番触れられたくないことに触れられて、感情が爆発しそうになる。ここがどこであるかも忘れて、喚き散らしてしまいそうだ。

 だが、俊也に対して、そんなことをする余力はない。悟のことで頭がいっぱいなのだ。

 俊也の台詞にはいろいろと気になる部分があった気がするが、それを追及する気も起きない。

 もはや俊也が視界に入っていること自体、煩わしいだけだ。

「……無理。俊也とはやり直せない」

 小さくそれだけ言い残し、俊也に背を向けて歩き出す。

 しかし、この間と同じようにまた手首をつかまれてしまった。

「どうしてだよっ!」
「っ、やめて!」

 志歩が強く手を振り払った瞬間、護衛が駆けつけてくれた。

 すぐに俊也を取り押さえてくれる。

「おい、志歩っ!」

 俊也は抵抗して喚いているが、志歩は別の護衛と共に振り返らずに歩く。

 俊也のことはすぐに思考から追い出した。そして、胸の痛みに必死に耐えながら、これから自分がしなければならないことだけを考えた。
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