セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
「出会いのきっかけは最初に話した通り、久枝さん。僕が彼女の見舞いに行ったときに、志歩さんと出会ったんだ」

 病院で話してくれたから、その出会いは志歩も把握している。久枝とはよく会話をしていたから、きっかけとしては自然といえるだろう。特に気になる点もない。

 志歩は黙って話の続きを聞く。

「それから何度か見舞いに行った僕は、そのたびに志歩さんと会話をするようになった。といっても、それはごく普通の会話で、あくまでも患者の家族と病院のスタッフという関係だったけどね。友人にも満たなかった」

 それは理解できると頷く。

 患者の家族には介助の説明をすることもあるから、会話があっても不思議ではない。志歩にとってはありふれた日常だ。

 そこからいったいどうやって仲を深めたのか。悟はようやくその本題へと入る。

「僕らの関係が少し変わったのは、久枝さんの快気祝いの食事会。久枝さんがお世話になった人を招待したんだけど、その中に志歩さんもいてね」

 小さな違和感と大きな違和感を覚え、志歩は待ったをかける。

「え? えっと、私が快気祝いのお食事会にいたんですか?」

 ひとまず小さな違和感は置いておき、大きな違和感について言及する。

 志歩がその場にいるのはどう考えてもおかしいのだ。

 しかし、悟からは期待とは違う答えしか返ってこない。

「そうだね。志歩さんも招待されて、参加していたよ」
「嘘……病院のルールで、お礼などは受け取ってはいけないことになっているはずなんですけど……」

 基本的に患者やその家族から贈り物を受け取ってはいけないことになっている。食事会というパターンは珍しいと思うが、ルールに照らし合わせればNGのはずだ。

「あー、そこが引っかかっていたんだね。あの人、退院時に結構な額を病院に寄付したから、それでだと思うよ。たぶん、特例だろうね。志歩さん以外のスタッフもいたから、心配しなくて大丈夫」
「なるほど。そうだったんですね」

 高額寄付をしてもらっている以上、久枝からの好意を無下にはできなかったということだろう。参加するよう通達でもあったのかもしれない。

「もしも気になるなら、ほかのスタッフに訊いてみるといいよ」
「そうですね。どんな感じだったのか、感想を聞いてみたいかも――って、話の腰を折ってしまいましたね。すみません」
「いいよ。会話は寄り道も楽しいものだからね。でも、そろそろ話題を戻そうか」

 志歩は、お願いしますと視線で続きを促した。
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